妊婦健診
妊婦健診は、母体と胎児の健康を守るための定期的な検査です。妊娠初期から出産まで、ガイドラインに準じ行っていきます。検査内容には、体重・血圧測定、尿検査、超音波検査などがあり、妊娠の経過に応じて血液検査や糖尿病検査なども実施します。異常の早期発見や妊婦さんの不安解消に役立ち、安全な出産に向けた重要な機会となります。
尚、当院では超音波検査で児の成長を評価していきますので、腹囲・子宮底の計測は省略させていただきます。
検査時期 | 検査項目 |
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初診 | 妊娠反応(必要時) 超音波検査(分娩予定日決定までは毎回、その後は原則4週間に1回) |
妊娠7~8週 | 子宮頸がん検診 |
妊娠9~11週 | 分娩予定日決定 初期血液検査:血液型・血算・血糖・感染症(HIV検査含む) |
妊娠12~16週 | *妊娠初期保健指導 |
妊娠18~21週 | 中期超音波スクリーニング |
妊娠20~23週 | クラミジア検査 |
妊娠23~26週 | 中期血液検査:血算・生化学・血糖・感染症・不規則抗体 |
妊娠28~31週 | 後期超音波スクリーニング |
妊娠34~35週 | *妊娠後期保健指導 |
妊娠35~36週 | GBS(B群溶連菌)検査 |
妊娠36~毎週 | 胎児心拍陣痛図(NST) |
妊娠36週前後 | 後期血液検査:血算・生化学・血糖 |
4Dエコー
当院では、最新の4Dエコー装置を導入しています。4Dエコーでは、リアルタイムで赤ちゃんの表情や動きを観察できるため、母子の絆を深められます。妊婦健診時に赤ちゃんの顔が見えそうなときに行っていきます。追加の料金は発生いたしません。赤ちゃんの向きや位置により見えないときもありますので、ご了承ください。
スクリーニング検査
当院では妊娠中期(20週前後)と後期(30週前後)に、胎児や付属物(胎盤・臍帯・羊水)に異常がないか詳しく観察していきます。異常所見がある場合には、必要に応じて高次医療機関をご紹介させていただくことがあります。
超音波スクリーニング検査
当院では、すべての妊婦さんに超音波検査を用いて妊娠中期と後期に胎児の臓器に異常がないかをスクリーニングしています。異常所見がある場合、必要に応じ高次医療機関へご紹介させていただくことがあります。
出生前診断
妊娠10~18週に胎児の染色体異常を調べる検査になります。妊娠22週未満は、母体保護法により人工妊娠中絶が認められており、先天異常が確定した場合には、「産むか産まないか?」という重大な選択が迫られることになります。
母体血清マーカー検査(クアトロテスト)
母体から採血した血液を検査し、胎児の染色体異常や二分脊椎などの確率を算出する検査です。
- 対象疾患:
- ダウン症候群、18トリソミー、開放性神経管奇形
- 検査時期:
- 妊娠15週から18週頃まで
羊水検査
羊水を採取し検査することで、染色体異常があるかどうかを調べます。なお、本検査はリスクを伴うため、実施前に十分なインフォームドコンセントを行った上で実施します。
- 対象疾患:
- 染色体異常全般
- 検査時期:
- 原則として妊娠16週以降
自然分娩
自然分娩は、自然の陣痛や腹圧など、お母さんの体が持つ力で赤ちゃんを産み出します。分娩の実感を得たい方、痛みへの不安が少ない方に適しております。
計画分娩
出産日をあらかじめ設定し、その日に陣痛促進剤などの医療介入を行い分娩にしていくスタイルです。ご家庭の事情でスケジュールを調整したい方や、立ち会い出産を必ず実現したいと思われている方に適しています。
計画分娩の注意点
分娩前処置や陣痛促進剤使用に伴うリスクがあります。陣痛促進剤の使用により、過強陣痛や過強陣痛による胎児機能不全などがあります。陣痛促進剤使用中は、常に胎児心拍監視モニターを装着し、異常を来していないかチェックしていきます。
分娩日の決め方
妊娠36週以降、妊娠経過、内診所見と胎児の状態を総合的に判断して、分娩日を決定します。過去の分娩状況やご家族の希望もあわせて、実際にお産する日を決定して予約します。
無痛分娩
当院の無痛分娩
当院では、硬膜外麻酔による無痛分娩を提供していきます。主には、計画無痛分娩とさせていただきますが、365日24時間対応しますので、急な陣痛発来の際にも必ず硬膜外カテーテルは挿入します。
当院の無痛分娩は、「痛みのない、スムーズなお産」を目指していきます。そのために、
- ① 適所(硬膜外腔)への硬膜外カテーテル留置
- ② 分娩進行とともに変化する痛みに対し、カテーテルの調整、局所麻酔薬の量や種類と使い分け疼痛をコントロール
- ③ 適切な分娩時期の見極め、
- ④ 麻酔で弱まる陣痛に対し、陣痛促進剤の使用や麻酔薬のコントロールなどをしながら陣痛を促進していきます。
痛みや分娩状況に応じ、適切な処置をしていくことで痛みを抑え、円滑な分娩進行を図っていきます。
愛育病院での実績は、初産婦の70%が計画日当日に分娩に至り、26%が翌日の分娩、4%が帝王切開での分娩でした(高度肥満や高齢などのハイリスク妊娠を含みます)。経産婦は、99%が計画日当日に分娩に至っています。
無痛分娩について
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● 出産の痛みと無痛分娩
陣痛の感じ方には個人差がありますが、出産直前のもっともきつい痛みは、癌や骨折の痛みより強いといわれています。この陣痛を我慢する必要はないという考えから、欧米では無痛分娩があたりまえのように行われています。無痛分娩にはいろいろな方法がありますが、現在もっとも普及しているのは、硬膜外麻酔を利用したものになります。
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● 無痛分娩の種類
無痛分娩には2つの方法があり、陣痛が始まるのを自然に任せ、陣痛が始まったら硬膜外麻酔を行うオンデマンド無痛分娩(自然無痛分娩)と、あらかじめ出産日を決めて陣痛誘発をしながら硬膜外麻酔を行う計画無痛分娩があります。
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● 無痛分娩の長所
分娩時の痛みを1/10程度にすることができます
子宮の収縮や子宮口に伴う痛みは脊髄からの神経によって支配されていますが、その神経を硬膜外麻酔でブロックすることで、痛みを9割程度取り除くことができます。また、痛みが軽減されることで分娩中の体力消耗が少なく、産後の体力回復も早くなります。
自然分娩に比べトラブルに対処しやすい
陣痛に対する不安や恐怖感が強い方やパニックになりやすい方は、痛みをおさえることによって、より安全に分娩を行うことができます。また、緊急に帝王切開に至る場合でも新たに麻酔する必要がなく、直ちに対応することができます。
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● 無痛分娩の短所
吸引分娩が必要になる可能性があります
出産が近づいてくると、赤ちゃんの下降感や圧迫感が強くなりますが、妊婦さんによってはこの圧迫感や陣痛が弱くなり、最後の力みが不十分と判断された場合には吸引分娩が必要になることもあります。
合併症が起こる可能性があります
医師は問題が起きないよう細心の注意を払って麻酔を行いますが、軽度の低血圧や発熱の症状が出る場合があります。また、極めて稀ですが局所麻酔による中毒や硬膜下血腫、低髄圧性頭痛が起こる場合もあります。
無痛分娩(硬膜外麻酔)の方法
背中に細かく柔らかいカテーテル(チューブ)を挿入して、出産が終わるまで痛み止めの麻酔薬を注入し、痛みを緩和する方法です。この方法は副作用や赤ちゃんへの影響もとても少なく、チューブを入れる際、皮膚に局所麻酔をしてから行うため、強い痛みを感じることはありません。
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● 硬膜外麻酔方法
陣痛の感じ方には個人差がありますが、出産直前のもっともきつい痛みは、癌や骨折の痛みより強いといわれています。この陣痛を我慢する必要はないという考えから、欧米では無痛分娩があたりまえのように行われています。無痛分娩にはいろいろな方法がありますが、現在もっとも普及しているのは、硬膜外麻酔を利用したものになります。
- ・はじめに腰に局所麻酔を行います
- ・脊髄(痛みを感じる神経の束)を覆っている硬膜の外まで針を挿入します
- ・次にカテーテルを挿入します
- ・お産の進み具合と痛みの状態を観察しながら麻酔薬を注入していきます
無痛分娩の安全性について
愛育ベスクリニックの系列の愛育病院では、開院以来これまでに2万件以上の無痛分娩を行ってきた実績と経験による厳重な安全管理体制を整え、日々安全性の向上に努めています。また万一に備え、近隣の大学病院とも連携しています。
無痛分娩に関する情報公開について
愛育ベスクリニックでは無痛分娩をご希望されている妊婦さんやご家族が、安心して無痛分娩をご選択いただけるように無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)の提言に基づき、無痛分娩に関する情報を以下のとおり公開しています。
日本産科麻酔学会によるQ&Aサイトはこちらをご確認ください。
ハイリスク分娩
以下の項目に当てはまる妊婦さんは、ハイリスク分娩管理の対象となり、常に帝王切開などの緊急処置を視野に入れた分娩管理が必要です。
- ・40歳以上の初産婦
- ・糖尿病合併妊娠
- ・分娩前のBMIが35以上
- ・常位胎盤早期剥離
- ・重症妊娠高血圧症候群
帝王切開
下半身だけの局所麻酔または全身麻酔を行い、手術でおなかと子宮を切開して赤ちゃんを直接取り出す出産です。
妊娠の経過を観察する段階で経腟分娩が適さないと判断された場合に選択される「予定帝王切開」と、経腟分娩中に母体や赤ちゃんに危険が及ぶと判断された緊急時に選択される「緊急帝王切開」があります。
予定帝王切開は、分娩予定日より少し前の日に設定し、陣痛を待たずに手術で出産するため、分娩そのものの痛みはほとんどありませんが、お腹に10㎝あまりの傷が残ります。
予定帝王切開術
あらかじめ計画的に行う帝王切開です。逆子(骨盤位)・双胎(ふたご)・前置胎盤・児頭骨盤不均衡・前回帝王切開などが該当します。
緊急帝王切開術
通常のお産を予定していたが、経腟分娩が進行中に、母体か赤ちゃんに何らかの問題が起きたため、急いで赤ちゃんを産む必要がある場合に行われます。胎児機能不全・胎盤早期剥離・妊娠高血圧症候群・分娩進行障害などが該当します。
麻酔法について
ほとんどの帝王切開術は、脊椎麻酔または硬膜外麻酔(またはその両方)のもとで行います。いずれも下半身に効く麻酔なので、手術中でも意識があり、赤ちゃんと対面して産声を聞くことができます。なお、無事出産したのちに、お母さんには鎮静剤で眠っていただくことがあります。ごくまれに、全身麻酔のもとで緊急帝王切開術が行われます。いずれの麻酔法でも、赤ちゃんに影響がでることはありませんのでご安心ください。手術後は、硬膜外麻酔で痛みのコントロールをします。
お腹の切開方法は?
少しでも傷が目立たないように、恥骨の上を横に切る形(横切開)を基本として行います。切開距離は10~15cmですが、お腹の大きさが妊娠前に戻るとともに、傷口は小さくなります。緊急帝王切開で赤ちゃんを早くとり出す必要がある場合や、子宮筋腫などのために手術の視野がせまくなる場合には、おへその下から恥骨に向かって縦に切開します(縦切開)。以前に帝王切開などで下腹部を切開している場合は、前の傷跡を切り取るように切開します。
外回転
外回転術とは、経腹的に児を骨盤位から頭位へ変える処置です。保険診療で認められている処置になります。当院では希望する方に対して外回転術を行っています。
当院での方法
妊娠36 週から37週に脊椎麻酔下で行います。処置当日は、外回転の成否にかかわらず、一泊入院のうえ、胎児心拍をモニターします。リスクを伴う処置になるため、当院かかりつけの方に限らせていただきます。成功率は80%程度で、これまで処置による事故は起きておりません。事故がないよう、慎重に行っていきます。
外回転を行うための条件
- ・帝王切開の既往がない
- ・児が成熟している(児の発育遅延を認めない)
- ・未破水
- ・施術前の児心拍に異常がない
- ・臍帯巻絡がない
外来担当医の判断で上記を満たしていても、児の大きさや胎盤位置により外回転術を避ける場合がありますので予めご了承ください。
胎児外回転術のリスク
- ①胎児除脈(50%):臍帯が圧迫されたり、児へ負担がかかったりして、児が徐脈になることがあります。操作を一旦中断すれば自然に回復することがほとんどですが、持続するようであれば緊急帝王切開術が必要になります。
- ②常位胎盤早期剥離(0.18%):母体のお腹の外から児を手で押さえて向きを変えますので、ごく稀に胎盤の一部が剥がれることがあります。剥がれたことが明らかな場合は緊急帝王切開により児を娩出します。
- ③母児間輸血症候群:本来、胎盤の中で母と児の血液が混じる事はありませんが、処置によって胎児血が母体血中に流入してしまうことがあります。その場合、急激に胎児貧血が 生じることがあり、早急に帝王切開が必要になることがあります。
- ④経腟分娩不成功 頭位になったとしても、必ずしも経腟分娩が可能となるわけではありません。